偽膜性腸炎 総論
2014.12.18 メディビトの知恵概要
・抗菌薬投与により起こる腸炎である。
ポイント
・内視鏡検査で大腸のかべに小さい円形の膜(偽膜)が見られる。
・クロストリジウムディフィシル菌(C.difficile)によるものである。この菌の産生する毒素により、粘膜が傷害されて起こる。
・本菌の感染は抗生剤の使用がなくても発症することがあり、院内感染症の中で最も頻度が高い疾患と考えられ、長期入院は危険因子である。
○「厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1g05.pdf
診断
・糞便より、C.difficileおよびその毒素を検出するが、偽陰性のことも多い。
症状
抗菌薬服用5~10日後に、
・下痢
・発熱
・腹痛
・血便
検査
・大腸内視鏡検査
・生検
・血液検査:白血球増多、CRPは10mg/dlを超えることもある。
・便による検査
①便培養(細菌培養検査):嫌気条件
②CDトキシン(抗原検査)
「厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎」より引用
治療、処方例
【治療】
・可能な限り薬剤を中止する。
・メトロニダゾール、バンコマイシンの経口投与が有効である。
禁忌
キーワード、ポイント
・抗菌薬投与により起こる腸炎である。
・内視鏡検査で大腸のかべに小さい円形の膜(偽膜)が見られる病態で、そのほとんどがクロストリジウムディフィシル菌(C.difficile)によるものである。この菌の産生する毒素により、粘膜が傷害されて起こる。
・本菌は芽胞を形成るため、抗生剤の使用がなくても院内感染を引き起こす。院内感染症の中で最も頻度が高い疾患と考えられ、長期入院は危険因子である。
(McFarlandの研究による)
12日間入院すれば 21%の患者がC. difficile感染をおこす→うち無症状患者63%
有症状者のいる部屋→培養陽性49%
無症状者のみの部屋→陽性29%
本菌陰性者のみがいる部屋→陽性8%
胃瘻チューブに慢性感染
○「厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1g05.pdf
診療のすすめ方、考え方
・原因抗菌薬の種類は、セフェム系、合成ペニシリン、クリンダマイシンなど多彩である。
・抗菌薬の経口投与、静脈投与いずれでもおこり、抗菌薬投与中止後に発症してくることもある。
診断
・問診などから本症を疑った場合、大腸内視鏡検査を行う。
・肛門側ほど高度の病変を呈するため、全身状態の悪い場合は、直腸S状結腸だけでも観察する。
・内視鏡所見では、黄白色半球状あるいは不整形の偽膜を認め、重篤な例では融合傾向を示す。肛門側に好発し、重症例では全大腸に及ぶ。
・生検では、フィブリン、凝固壊死物質、剥離上皮細胞からなるきのこ状の偽膜を認める。
・血液検査から、白血球数増多、低蛋白血症、電解質異常を認める。
・糞便より、C.difficileおよびその毒素を検出するが、偽陰性のことも多い。
症状
抗菌薬服用5~10日後に、
・下痢
・発熱
・腹痛
・血便
検査
・大腸内視鏡検査
・生検
・血液検査:白血球増多、CRPは10mg/dlを超えることもある。
・便による検査
検体:常在菌のため、新鮮便(採取後2時間以内)を用いることが重要。
不可能な場合には、4℃に保存した検体を2日以内に用いる。
①便培養(細菌培養検査):嫌気条件下に CCFA 培地ないし CCMA 培地を用いて行う。
②CDトキシン(抗原検査)
・C.difficileが毒性を示すためには、毒素A(toxinA)と毒素B(toxinB)が必要であり、toxinBを
組織培養法で検出することが最も確実な根拠と考えられているが、日本ではこの方法が用
いられないためtoxinAを酵素免疫法で検査することが多い。
ToxinA: 好中球遊走因子であり、サイトカインの遊離を起こし、水分の過分泌や
腸管の出血壊死を起こしうる。
ToxinB:細胞毒で細胞骨格の破壊をもたらす。
・ToxinAに対する試薬:イムノクロマトグラフィー法であるユニクイック
EIA 法であるイムノカードCDトキシンA など
・現在使用されているCDチェックは毒素A(-)毒素B(+)株は偽陰性となる。
「厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎」より引用
「厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎」より引用
鑑別診断
・判別すべき疾患:虚血性大腸炎、他の感染性大腸炎、 エルシニア、カンピロバクター、
サルモネラ、病原性大 腸菌(ウイルスなど)、MRSA 腸炎、抗菌薬不耐症、
抗菌薬起因性出血性腸炎、炎症性腸疾患(Crohn 病、潰瘍性大腸炎)など
・判別の要点:内視鏡検査と培養に依存する。
・内視鏡所見:出血性腸炎か否か、潰瘍形成の有無、病変の存在部位などによる。
・他の感染症の診断:出血や潰瘍、アフタ様潰瘍などから判別を進める。
治療、処方例
【治療】
・可能な限り薬剤を中止する。
・メトロニダゾール、バンコマイシンの経口投与が有効である。
【処方例】
・フラジール(メトロニダゾール) 0.75~1.5g 分3~4 /10~14日間
安価であり第一選択
・バンコマイシン 1.5~2.0g 分3~4 /10~14日間
禁忌
患者指導
専門医に紹介
診断
「厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎」より引用
【鑑別診断】 「厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎」より引用