胃軸捻転症 総論
2014.12.18 メディビトの知恵概要
・胃の一部または全体が、何らかの原因により軸捻転を生じ、閉塞症状をきたす病態。
・嘔吐や腹部膨満をきたし、新生児や乳児、幼児に多く発症する。
ポイント
・症状は閉塞の程度による通過障害と血流障害の関与で異なる。
①急性型(発生頻度:1/3程度、軸捻転180°以上)
・閉塞が完全であれば血流障害も強く、急性型でかつ重症な経過をとる。
②慢性型(発生頻度:2/3程度、軸捻転180°以下)
・閉塞が不完全であれば慢性型となり、症状が比較的長い経過をたどる。
診断
・胸部・腹部の単純X線検査、胃のX線造影検査、CT検査により、捻じれの有無や程度を診断する。
症状
・急性型:嘔吐、激しい腹痛
・慢性型:食欲不振、げっぷ、吐き気、嘔吐、腹部膨満、心窩部痛、まれに無症状
検査
・上部消化管内視鏡検査:診断だけでなく、治療法の1つとして内視鏡による整復が期待できる。
・胸部X線、腹部単純写真、CT検査
治療、処方例
【治療】
・急性型:内視鏡操作による整復。改善のない場合は緊急に手術を行う。
・慢性型:胃管挿入による吸引減圧療法。
禁忌
キーワード、ポイント
・胃の一部または全体が、何らかの原因により軸捻転を生じ、閉塞症状をきたす病態。
・嘔吐や腹部膨満をきたし、新生児や乳児、幼児に多く発症する。
・胃は周囲の臓器と胃横隔膜間膜、胃脾間膜、胃結腸間膜、胃肝間膜などの靱帯によって固定されているが、1歳未満の新生児や乳児では胃の固定靱帯は未発達な状態で、何らかの原因で胃の軸捻転が発生して閉塞状況になる頻度が高くなる。
・特に結腸内にガスが貯留して胃が挙上したり、腹圧の上昇によって発症するとされる。
・成人においては、胃下垂や瀑状胃などの位置異常や、胃運動機能の亢進状態などが胃の軸捻転の要因となる。
【区分】
・特発性(解剖学的に明らかな異常がなく発症):胃軸捻転症
・続発性(何らかの成因による):横隔膜ヘルニア、傍食道裂孔ヘルニア、外傷性横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症など
【分類】
・長軸性(長軸捻転):胃の噴門と幽門を結ぶ線を軸にして回転(臓器軸性捻転)
また、前方型と後方型にわけられるが、ほとんどが前方型である。
・短軸性(短軸捻転):胃の小弯と大弯を結ぶ線を軸にして回転(腸間膜軸性捻転)
・両軸性(複合型):長軸性と短軸性が混在する。
「専門医のための消化器病学 胃軸捻転症」より引用
診療のすすめ方、考え方
・症状は閉塞の程度による通過障害と血流障害の関与で異なる。
①急性型(発生頻度:1/3程度、軸捻転180°以上)
・閉塞が完全であれば血流障害も強く、急性型でかつ重症な経過をとる。
・完全閉塞は循環障害を起こし、胃壁壊死や穿孔を合併してショック状態となることがある。
・診断が遅れると死亡率が高くなる。
②慢性型(発生頻度:2/3程度、軸捻転180°以下)
・閉塞が不完全であれば慢性型となり、症状が比較的長い経過をたどる。
診断
・胸部・腹部の単純X線検査、胃のX線造影検査、CT検査により、捻じれの有無や程度を診断する。
・また本疾患を疑ったら、上部消化管全体の描出が可能な上部消化管造影検査をすぐに行う。
症状
・急性型:嘔吐、激しい腹痛、上腹部膨満感(ボルヒアルトの3徴:吐物のない嘔吐、上腹部痛、胃管挿入困難)
・慢性型:食欲不振、げっぷ、吐き気、嘔吐、腹部膨満、心窩部痛、まれに無症状
・食道裂孔ヘルニアに合併した場合:腹部の症状に乏しく、胸部痛、呼吸困難などの胸部の症状が主体
検査
・上部消化管内視鏡検査:診断だけでなく、治療法の1つとして内視鏡による整復が期待できる。
・胸部X線、腹部単純写真:直接的な診断法ではないが、横隔膜の異常や軸捻転による閉塞のために鏡画像を認める重要な検査である。
・CT検査:胃穹隆部と同一断面で食道胃接合部の前方に前庭部が位置することが特徴とされる。
鑑別診断
治療、処方例
【治療】
・急性型:緊急に手術を行う。術式は、捻転を整復したのちに原因疾患の治療と、胃を腹壁や横隔膜に固定する胃固定術を行う。
胃が壊死している場合は局所の切除、あわせて全身管理が重要。
・慢性型:胃管挿入による吸引減圧療法を行う。
ただし、完全閉塞に近い場合は胃管挿入は困難であり、無理な操作が穿孔をきたすこともあるため注意が必要。
・慢性型で横隔膜や胃自体に異常がない場合:体位の工夫(授乳又は食後に腹臥位ないし右側臥位)、食事摂取方法の見直し(少量×回数増)、浣腸(排便、排ガス)などにより改善する。
禁忌
患者指導
・食事の過剰摂取を避ける
・排便習慣を整える