ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌) 総論
2015.11.27 メディビトの知恵概要
ポイント
・ピロリ菌は5歳以下の幼少期に感染し、萎縮性胃炎、腸上皮化生へと進展する。
【ピロリ菌感染による関連疾患】
・慢性胃炎
・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・胃癌
・胃MALTリンパ腫
・胃過形成ポリープ
・機能性胃腸症(FD)
・鉄欠乏性貧血
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
診断
症状
・胃もたれ、嘔気、空腹時の痛み、食後の腹痛、食欲不振
検査
○検査(PPIを2週間以上休薬後に行う)
①内視鏡を使う検査方法(生検組織を必要とする)
・迅速ウレアーゼ試験
・鏡検法
・培養法
②内視鏡を使わない検査方法(生検組織を必要としない)
・尿素呼気試験(診断薬の服用後の呼気)
・抗体測定(血液または尿)
・便中抗原測定
治療、処方例
【治療】
・ピロリ菌除菌療法の対象(保険診療)
①内視鏡検査または造影検査で胃潰瘍、慢性胃炎、または十二指腸潰瘍と診断された患者
②胃MALTリンパ腫の患者
③特発性血小板減少性紫斑病の患者
④早期胃がんに対する内視鏡的治療後(胃)の患者
⑤内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と診断された患者
・ピロリ菌の除菌判定は除菌治療終了後、4週間以上あけて尿素呼気試験で行うことが望ましい。
・ピロリ菌除菌成功後も1~2年に1回程度の定期的な内視鏡検査を行い胃癌の発生に注意する。
○除菌薬の副作用
・下痢
・味覚異常
・蕁麻疹、薬疹
・肝機能障害
○患者指導
・除菌療法を成功させるために、指示された薬は必ず服用する。
・ピロリ菌の除菌療法が成功しても、定期的な内視鏡検査を進める。
禁忌
キーワード、ポイント
・免疫力の弱い幼少期の感染がほとんどで、感染は終生持続する。
【ピロリ菌について】
・ピロリ菌は、胃粘膜に生息する3-5μm程度の細菌で、螺旋形の菌体に数本の鞭毛がついた構造をしている。
【ピロリ菌感染による関連疾患】
・慢性胃炎
・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・胃癌
・胃MALTリンパ腫
・胃過形成ポリープ
・機能性胃腸症(FD)
・鉄欠乏性貧血
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
○「日本ヘリコバクター学会誌」
http://www.jshr.jp/pdf/journal/guideline2009_2.pdf
http://www.jshr.jp/pdf/journal/supplement.pdf
診療のすすめ方、考え方
・ピロリ菌は5歳以下の幼少期に感染し、高齢になるに従い、表層性胃炎から胃粘膜の萎縮を伴った萎縮性胃炎、および腸上皮化生へと進展する。
診断
・内視鏡を使う、または内視鏡を使わない検査により診断する。
症状
・胃もたれ
・嘔気
・空腹時の痛み
・食後の腹痛
・食欲不振
検査
○検査(PPIを2週間以上休薬後に行う)
①内視鏡を使う検査方法(生検組織を必要とする)
・迅速ウレアーゼ試験
・鏡検法
・培養法
②内視鏡を使わない検査方法(生検組織を必要としない)
・尿素呼気試験(診断薬の服用後の呼気)
・抗体測定(血液または尿)
・便中抗原測定
鑑別診断
治療、処方例
【治療】
・投薬によるピロリ菌の除菌
・ピロリ菌除菌療法の対象となる人(保険診療)
①内視鏡検査または造影検査で胃潰瘍、慢性胃炎、または十二指腸潰瘍と診断された患者
②胃MALTリンパ腫の患者
③特発性血小板減少性紫斑病の患者
④早期胃がんに対する内視鏡的治療後(胃)の患者
⑤内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と診断された患者
・ピロリ菌の除菌判定は除菌治療終了後、少なくとも4週間以上あけて尿素呼気試験で行うことが望ましい。
ただし、臨床的には4週間では偽陰性の診断となることもあり6週~8週間程度の間隔で行わることが多い。
・ピロリ菌の除菌後には胃酸分泌能の回復により胃食道逆流症状が1割程度の患者に出現することに注意する。ただし、症状は経過中に軽減することが多い。
・高度胃粘膜萎縮や腸上皮化生を伴う慢性胃炎では胃癌のリスクが高い。ピロリ菌除菌成功後も数年間は、1~2年に1回程度の定期的な内視鏡検査を行い胃癌の発生に注意する。除菌後10年以上経過後での胃癌の発生の報告もあり、長期間の経過観察が進められている。
【処方例】
○プロトンポンプ阻害薬(PPI)と2種類の抗生物質を組み合わせる。
①一次除菌:プロトンポンプ阻害薬(PPI)+アモキシシリン+クラリスロマイシン 分2で7日間
・プロトンポンプ阻害薬: ボノプラゾン(タケキャブ)(20mg) 2錠/日
エソメプラゾール(ネキシウム)(20mg)2錠/日 など
・抗生物質:アモキシシリン(パセトシン)(250mg) 6錠/日
クラリスロマイシン(クラリス)(200mg) 2錠/日
②二次除菌:プロトンポンプ阻害薬(PPI)+アモキシシリン+メトロニダゾール 分2で7日間
・一次除菌の抗生剤のうち1種類を変更する。
・クラリスロマイシンをメトロニダゾール(フラジール)(250mg)2錠/日に変更
○プロトンポンプ阻害薬(胃酸分泌抑制)
ボノプラゾン(タケキャブ)、オメプラゾール(オメプラール、オメプラゾン)、ランソプラゾール(タケプロン)、ラベプラゾール(パリエット)、エソメプラゾール(ネキシウム)
○三次除菌以降の例(保険適用外)
③三次除菌:パリエット(10mg)4錠/アモキシシリン(250mg)8錠、分4で14日間
④四次除菌:パリエット(10mg)4錠/アモキシシリン(250mg)8錠、分4で14日間
+ レボフロキサシン(クラビット500mg)1錠、分1で10日間
or シタフロキサシン(グレースビット50mg)4錠、分2で10日間
○除菌薬の副作用
・下痢:抗菌作用で腸内細菌のバランスが乱れるため頻度が高い。便が柔らかい程度なら心配なく、下痢が続いても一時的な症状であり、長くても2~3日で治まる。
・味覚異常:内服終了後に自然回復する。
・蕁麻疹、薬疹
・肝機能障害
禁忌
患者指導
・除菌療法を成功させるために、指示された薬は必ず服用する。
・服用中は禁煙、アルコールの摂取は避ける。特にフラジールとアルコール。
・ピロリ菌の除菌療法が成功しても、定期的な内視鏡検査を進める。
・除菌療法後、胸やけがする場合は主治医に相談する。
専門医に紹介
・二次除菌治療で不成功の場合、三次除菌以降については専門医に相談する。(保険適用外)