急性扁桃炎 総論
2016.01.20 メディビトの知恵キーワード、ポイント
・咽頭にも炎症を認め、口蓋扁桃の炎症が特に強いタイプの急性咽頭炎
・大半はウイルス性で、細菌ではA群β溶連菌が多いが全体の10%程度
・溶連菌が原因の場合は、急性腎炎、リウマチ熱の合併症に注意が必要
診療のすすめ方、考え方
咽頭痛や咽頭発赤を認めるが咳や鼻水がないとき、軟口蓋の「燃え上がるような」赤さを認める場合は溶連菌を想起する。溶連菌の疑いがあれば、積極的に迅速検査を行う。
診断
・口腔・咽頭所見:口蓋扁桃の発赤・腫脹と白苔の付着
(日本耳鼻咽喉科学会 http://www.jibika.or.jp/「口腔・咽頭の病気」より引用)
図 溶連菌による発赤
図 アデノウイルスによる発赤(meddic.jpより引用)
症状
風邪の症状(発熱など)+激しい咽頭痛
検査
・溶連菌抗原迅速検査(咽頭の発赤あり)
・アデノウイルス抗原迅速検査(咽頭の発赤・扁桃に白苔の付着あり)
鑑別診断
・扁桃周囲膿瘍:高熱、唾を飲み込めないほど痛い、よだれ、開口障害、斜頚、扁桃周囲の腫脹、口蓋垂の偏位、人生最悪の痛み、tripod position(両手をついて顔を前に出した三脚のような姿勢)
図 扁桃周囲腫瘍の咽頭所見(前口蓋弓が張り出し、口蓋垂が偏位)
(日本耳鼻咽喉科学会 http://www.jibika.or.jp/「口腔・咽頭の病気」より引用)
・咽頭後壁膿瘍:高熱、強い咽頭痛(のどを突いたような痛み)、嚥下障害、頭をそらせている、喘鳴や呼吸障害
・急性喉頭蓋炎:咽頭所見が軽いのに強い嚥下痛、ふくみ声・喘鳴・呼吸困難、咽頭上方の圧痛
頸部X線画像(vallecula sign=喉頭蓋谷が白く映る)
・急性心筋梗塞:咽頭・扁桃炎の所見なしでも喉の痛み(タートルネックで隠れる場所の痛みは注意)
治療、処方例
【治療】
・溶連菌(+)なら抗菌薬投与→3日たっても回復しない場合は薬の再検討か扁桃周囲腫瘍を疑う。
・それ以外の場合は対症療法で経過観察
・年齢に関係なく年に3回以上扁桃炎を繰り返す場合は扁桃摘出を考慮して耳鼻科へ紹介する
【処方例】
・サワシリン細粒[10%] 40~90mg/kg 分3
・カロナール 1回400〜500㎎(頓服:1日4回まで)小児用は10-15mg/㎏/回
・ブルフェン 1回200㎎(頓服:1日3回まで)
小児はワイドシリン 1日40㎎/kg 分3 10日間
あるいはジスロマック1日10㎎/kg 1回 3日間
禁忌
患者指導
専門医に紹介
・扁桃周囲腫瘍、咽頭後壁膿瘍の疑いあり→耳鼻咽喉科へ緊急紹介
・急性喉頭蓋炎、急性心筋梗塞の疑いあり→救急病院へ
・年齢に関係なく年に3回以上扁桃炎を繰り返す場合