急性中耳炎(小児) 総論
2016.01.20 メディビトの知恵キーワード、ポイント
・急性に発症した中耳の感染症であり、原因はウイルス性と細菌性、ウイルス・細菌混合性がある。
・単純な急性中耳炎は発症後3週間から4週間以内で治癒
・6ヶ月〜2歳までに好発
・ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種歴の確認
・症状のない小児の発熱では鼓膜を確認する習慣をつける
・成人で改善の悪い中耳炎では耳管の閉塞起点となる腫瘍がないか否定が必要
・日本耳科学会 日本小児耳鼻咽喉科学会「小児急性中耳炎診療ガイドライン 2013版」(http://www.jsiao.umin.jp/pdf/caom-guide.pdf)
図 耳の断面図
診療のすすめ方、考え方
・耳痛や発熱の症状が軽快しても炎症が持続していることもあるので、完治するまでの治療が必要。
・低年齢、保育園児は重症化しやすいので注意する。
・高熱が続き、低年齢の場合は、菌血症や尿路感染症の可能性も想起。
・耳漏を伴い、39℃以上の発熱・強い耳痛の場合は抗菌薬を投与。小児の場合は以下を参照
(山本舜悟編 「かぜ診療マニュアル」より引用)
診断
問診:急性(48時間以内に発症)な耳痛
手術用顕微鏡や内視鏡を用いた鼓膜観察:発赤、貯留液、膨隆、耳漏
(日本耳科学会 日本小児耳鼻咽喉科学会「小児急性中耳炎診療ガイドライン 2013版」より引用)
中等症の所見(鼓膜膨隆が部分的)
重症の所見(鼓膜全体が膨隆)
(My MED http://mymed.jp/「中耳炎・外耳炎より引用)
※重症度スコア
※同一症例では鼓膜の膨隆と耳痛のスコアは加算しない
※3歳未満は3点を加算
軽症:5以下、中等症:6〜11、重症:12以上
症状
・耳痛、発熱、耳漏
・鼓膜の強い発赤や黄色貯留液→ツチ骨短突起が見えづらい→鼓膜穿孔、耳漏へと悪化
検査
・鼻咽腔ぬぐい液と中耳貯留液(鼓膜切開の場合)の細菌培養検査
鑑別診断
・乳様突起炎:耳介周囲の強い発赤、耳介の聳立 →CT画像、手術を考慮
(My MED http://mymed.jp/「中耳炎・外耳炎より引用)
・乳突蜂巣炎:耳介周囲の圧痛、耳周囲の腫脹
・滲出性中耳炎:鼓膜の膨隆なし、耳漏なし、痛みなし、聞こえにくい
治療、処方例
【治療】※重症度スコアを参照
・軽症:抗菌薬なしで3日間経過観察→改善なしならサワシリン常用量投与
経過観察中に疼痛緩和(カロナールやロキソニンなど)
・中等症:サワシリン高用量投与 3日間
・重症:鼓膜切開とサワシリン高用量3日間投与
※いずれも改善しない場合は薬剤感受性を考慮し、用量や薬剤[アモキシシリン・クラブラン酸(14:1)やセフトリアキソンナトリウム]を変える。
【処方例】
・軽症:サワシリン細粒10%[100mg1g] 40mg/kg/日 分3 3日間
・中等・重症:次のいずれか
サワシリン細粒10%[100mg1g] 60~90mg/kg/日 分3 3日間
クラバモックス小児用配合ドライシロップ[(636.5mg)1g] 96.4mg(力価)/kg/日分2 3日間
メイアクトMS小児用細粒10%[100mg1g] 9~18mg/kg/日 分3 3日間
※非常によく処方される経口第3世代セファロスポリンはバイオアベイラビリティが極端に低く、処方しても有効血中濃度に達しないため、吸収率の悪さも相まって腸内正常細菌叢を乱し、下痢の原因となりやすいという報告あり。
禁忌
患者指導
身体的な安静を勧める。運動は急性期には症状を悪化させるので差し控えること
専門医に紹介
耳鼻科へ紹介
・鼓膜所見が取れず原因不明の発熱が持続する
・治療開始後2週間たっても改善が見られない
・急性乳様突起炎、急性乳突蜂巣炎の疑いがある
・耳漏流出がみられる、反復性中耳炎、遷延性中耳炎などの鼓膜チューブを考慮するさい