急性副鼻腔炎(小児) 総論
2016.01.20 メディビトの知恵キーワード、ポイント
・起炎菌として、一般的には肺炎球菌、インフルエンザ菌、カタラーリス菌、黄色ブドウ球菌がある。
・眼窩内合併症、頭蓋内合併症に注意
・日本鼻科学会「急性副鼻腔炎診療ガイドライン2010」(http://guideline-navi.net/otolaryngology/307/ )
診療のすすめ方、考え方
初診時に鼻腔内所見の確認(鼻鏡やファイバースコープを使用)と、必要に応じX線写真や副鼻腔CTの検査を行うことで合併症を早期確認する。さらに保育園児には合併症や1 ヶ月以内の抗菌薬使用に関しての問診も重要である。
抗菌薬処方の目安は、副鼻腔の膿汁所見をみとめる場合(=発赤、腫脹、発熱、疼痛が揃った場合)で、
・症状の持続期間に関係なく、強い片側性頬部痛や頭を下げた時の頭痛悪化徴候
・発熱あり
・鼻炎症状が10日以上継続
・再度症状悪化
診断
・問診:急性に発症、罹病期間が1カ月以内と短い、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う
・細菌培養
・X線写真(Waters法、Caldwell法):副鼻腔に陰影をみとめる
(ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/「副鼻腔炎」より引用)
・鼻腔内所見:中鼻道より膿性鼻汁の漏出、粘膜は発赤・腫脹
(日本鼻科学会「急性副鼻腔炎診療ガイドライン2010」より引用)
比較図 アレルギー性鼻炎(下鼻甲介が蒼白・水様性鼻汁が主)
表 小児の急性副鼻腔炎重症度スコア(治療時に利用)
(日本鼻科学会「急性副鼻腔炎診療ガイドライン2010」より引用)
症状
・鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽
・顔面痛、膿性の鼻汁、においの減少・消失
検査
・X線画像
・必要に応じ細菌培養
・副鼻腔CT(激しい頭痛、眼痛・眼瞼腫脹あり):明瞭な陰影
→合併症:眼窩蜂窩織炎、眼窩骨膜下膿瘍、脳膿瘍、髄膜炎、海綿静脈洞血栓症など
鑑別診断
・副鼻腔癌、:CT画像、MRI画像に異常陰影あり。
図 副鼻腔癌CT画像
(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター http://www.onh.go.jp/「副鼻腔癌」より引用)
・浸潤型副鼻腔真菌症:糖尿病+視野異常あり。
治療、処方例
【治療】
・軽症:抗菌薬投与せず、5日間対症的治療
・中等症:抗菌薬 常用量 5日間投与
・重症:抗菌薬 高用量 5日間投与
(日本鼻科学会「急性副鼻腔炎診療ガイドライン2010」より引用)
【処方例】
・軽症 症状に応じて
カロナール 10〜15㎎/kg/回(1日4回まで)
ムコダインDS50% 10㎎/kg 1日3回
ポララミン0.5㎎/kg 1日3回
※小児には抗ヒスタミンの学習障害や粘性を上げることで逆に悪化するなどの考えもあるので、特に熱があるときには処方しないほうがよい
・中等症
体重に応じて成人のを調整
サワシリン錠
メイアクトMS錠
・重症
体重に応じて成人のを調整
サワシリン錠
メイアクトMS錠
ジェニナック錠またはロセフィン静注用
上顎洞穿刺洗浄
葛根湯加せんきゅう辛夷 成人1日7.5gを 分2〜3 年齢、体重、症状により適宜増減
※高用量サワシリンでも効かない場合、経口第3世代セファロスポリンが処方されるが、バイオアベイラビリティが極端に低く、 処方しても有効血中濃度に達しないため効果が低い、吸収率の悪さも相まって腸内正常細菌叢を乱し、下痢の原因となる。
禁忌
・フルオロキノロン系は、骨端成長板の早期閉鎖が懸念されるため小児には用いない。
患者指導
・鼻水が多いときはプールは避けたほうがよい。
専門医に紹介
・視力異常、全身状態、バイタルが悪い場合→耳鼻科へ
・抗菌薬を処方しても症状改善なしの場合:真菌、腫瘍、上顎がんの可能性 →耳鼻科へ
学会、研究会
ガイドライン
日本鼻科学会「急性副鼻腔炎診療ガイドライン2010」(http://guideline-navi.net/otolaryngology/307/ )
患者会
ホームページ
ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/「副鼻腔炎」
独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター http://www.onh.go.jp/「副鼻腔癌」