乳酸アシドーシス治療、処方例
2015.12.01 メディビトの知恵キーワード、ポイント
診療のすすめ方、考え方
診断
症状
検査
鑑別診断
治療、処方例
・ショック状態、低酸素血症などの全身状態の改善が重要。
・肝性昏睡,アルコール中毒,大出血などの基礎疾患があるときは,これらに対する治療を優先する。
・評価中に原因が明らかになった場合は、その原因の治療が重要。
・循環血漿量減少性ショックや敗血症性ショック、心不全や腎不全がない乳酸アシドーシス患者には生理食塩水の輸液がよいと考えられる。
・乳酸アシドーシスの際の輸液製剤は、乳酸を含む製剤(ラクテックなど)は避け、乳酸を含まない製剤を輸液すべきである。
[投与例]
心原性以外の重篤でないショックを認める場合、生理食塩水100~300mL/時 点滴静注
心原性以外の重篤なショックを認める場合、生理食塩水300~1,000mL/時 点滴静注
心原性の重篤なショックを求める場合、5%糖液10~30mL/時 点滴静注
・心不全、腎不全を有する患者にはカリウムも乳酸も含まず、塩分の少ない輸液(1号液など)が無難であると考えられる。
・低栄養が疑われる患者では、ビタミンB1製剤100㎎相当を静注もしくは点滴に混注する。
[投与例]
ビタメジン静注用(ビタミンB1 100㎎/1バイアル)、メタボリンG注射液(ビタミンB1 10mg/ml)
・心不全、循環不全、ショックの患者で、点滴による治療への反応が悪い場合はドパミン(イノバン)、ドブタミン(ドブトレックス)の投与を行う。
・ノルアドレナリンは組織低酸素を悪化させるため使用を避け、イノバンもしくはドブトレックスを用いるほうがよい。
[投与例]
・イノバン注 3μg/kg/minから開始。3~15μg/kg/minで維持。
・ドブトレックス注射液 3μg/kg/minから開始。3~15μg/kg/minで維持。
・炭酸水素ナトリウム(メイロン)は安易に使用せず、pH 7.1未満のときにpH 7.2~7.25程度を目標に投与することが薦められる。
・pH7.1以上のアシドーシスの補正のためのメイロンの投与によって死亡率が低下したというエビデンスはなく、逆に、肺水腫、高浸透圧などを引き起こすことが知られている。
不足塩基量 (mEq/L)=体重 (kg)×0.5×(24-実測HCO3-値)
[投与例]
7%メイロンの場合
必要量 (mL)=不足塩基量 (mEq/L) ×¼×体重 (kg) の50%をまず投与
1時間ごとに検査し適宜追加投与
・高血糖を伴う乳酸アシドーシスの患者には、経静脈的に生食50mLにヒューマリンR50単位を混ぜたものをシリンジポンプにて投与する。
[投与例]
ヒューマリンR注0.1単位/Kg/時より開始、血糖値を見ながら適宜投与量を調整。
脱水・循環不全を認めれば静注、循環が保たれ、脱水がなければ皮下注も可。