慢性心不全 総論
2014.12.18 メディビトの知恵キーワード、ポイント
・症状の程度を問わず、状態がほぼ一定している状態。
・慢性の心筋障害 により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素 需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり、,肺、体静脈系または両系にうっ 血を来たし日常生活に障害を生じた病態。
・ 労作時呼吸困難、息切れ等の症状の出現により生活の質的低下が生じ、日常生活が著しく障害される。
・また致死的不整脈の出現も高頻度にみられ、突然死の頻度も高い。
〇「慢性心不全治療ガイドライン 日本循環器学会」
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_h.pdf
○「国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス」
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/
診療のすすめ方、考え方
・主病態は、左房圧上昇・低心拍出量に基づく左心不全と、浮腫、肝腫大等の右心不全に大別され、 これらに伴う症状・所見を診断する必要がある。
「http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_h.pdf」より引用
診断
・基本的には急性心不全と同様、左心不全症状と右心不全症状を見極めて行うが、これらの症状が慢性に経過していることを問診で確認する。
症状
・労作時呼吸困難
・息切れ
・四肢冷感
・尿量減少
・四肢の浮腫
・肝腫大
・浮腫に伴う体重増加(2~10kg程度)
・左房圧上昇に伴う自覚症状:肺うっ血を原因とした呼吸困難感
左心不全 の進行につれて夜間の発作性呼吸困難、起座呼吸が出現する。
・ 低心拍出量の自覚症状:全身倦怠感、頭痛等の神経症状、食思不振等、非特異的なものも多い。
検査
・胸部X線検査:肺うっ血、胸水、心陰影の拡大を確認する。
慢性心不全患者の典型的な胸部X線写真
「http://mymed.jp/di/jcf.html」より引用
・心電図:心房細動や虚血性変化(ST変化、Q波、陰性T波)を確認
・心エコー検査:左室駆出率低下や弁膜症の有無や程度、左室肥大の有無を確認する。
・血液検査:BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)
鑑別診断
・心不全により惹起される浮腫は、肝性浮腫、貧血、腎性浮腫等
・呼吸器疾患を否定するため 、肺機能検査を行う。
治療、処方例
【治療】
・自己管理能力の向上
自己管理が重要なため、患者および家族に対する教育、相談支援により患者の自己管理能力の向上に努める。
①薬物療法
「http://www.syg.co.jp/test/artist_test/01/EssentialArtist01.pdf」より引用
・腎機能障害合併例ではACE阻害薬とアンギオテンシン拮抗薬、抗アルドステロン薬の併用は血清カリウムの上昇を招くことがあり、注意が必要。
【処方例】
a)ACE阻害薬
レニベース錠Ⓡ(エナラプリル) 初期投与量 2.5mg/日、維持量 5~10mg/日
ゼストリル錠Ⓡ(リシノプリル) 初期投与量 2.5mg/日、維持量 5~10mg/日
カプトリル錠Ⓡ(カプトプリル) 初期投与量 37.5mg/日、維持量 37.5~75mg/日
b)アンギオテンシン受容体拮抗薬
ブロプレス錠Ⓡ(カンデサルタン) 初期投与量 4mg/日、維持量 4~12mg/日
ニューロタン錠Ⓡ(ロサルタン) 初期投与量 12.5mg/日、維持量 12.5~50mg/日
ディオバン錠Ⓡ(バルサルタン) 初期投与量 20mg/日、維持量 40~80mg/日
c)β遮断薬
アーチスト錠Ⓡ(カルベジロール) 初期投与量 1.25mg/日、維持量 2.5~10mg/日
セロケン錠Ⓡ(メトプロロール) 初期投与量 12.5mg/日、維持量 60~120mg/日
メインテート錠Ⓡ(ビソプロロール) 初期投与量 1.25mg/日、維持量 5~10mg/日
気管支喘息の既往があるときは、β2受容体遮断により悪化することがあり、慎重に投与する。投与後も呼吸器症状が出現することがあるので、定期的に聴診、SaO2をチェックする。もっともβ1受容体選択性が高いのはメインテートなので、呼吸器疾患があるときは考慮する。
d)抗アルドステロン薬
アルダクトンA錠Ⓡ(スピロノラクトン) 初期投与量 25mg/日、維持量25~50mg/日
e)利尿薬
ラシックス錠Ⓡ(フロセミド) 20~80mg/日
サムスカ錠Ⓡ(トルバプタン) 7.5~15㎎
f)ジギタリス剤
ジゴシン錠Ⓡ(ジゴキシン) 0.125~0. 25mg/日
年齢、性別、体重、腎機能を考慮し投与量を決定する。
血中濃度を測定し 基準値は1.0~2.0ng/mlだが、0.6~1.5ng/ml程度にコントロールする。
g)経口強心薬
中等症から重症の心不全で、少量のカルシウムセンシタイザーを使用した場合に有効であったとの報告がある(EPOCH study)
アカルディカプセルⓇ(ピモベンダン) 初期投与量 1.25mg/日、維持量 2.5mg/日
h)抗不整脈薬
アンカロン錠Ⓡ(アミオダロン) 200-400mg/日、維持量 100-200mg/日
心房細動レートコントロール ジゴキシン、β遮断薬、ベラパミル
i)血管拡張薬
ノルバスク錠Ⓡ(アムロジピン) 初期投与量 2.5mg/日、維持量 2.5~10mg/日
カルシウム拮抗薬は一般に心不全を悪化させることが臨床試験の結果から知られている。
非虚血性心不全においてアムロジピン、フェロジピンは少なくとも予後を悪化させないことが知られており、高血圧合併例には望ましい。
②その他の治療
・心不全の原因疾患の治療
・心臓再同期療法(CRT)
・ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)
・運動療法・呼吸療法