風邪症候群に類似する疾患の鑑別
風邪について、他の類縁疾患との鑑別がしっかりできるように勉強中です。一般には「症状が多様=ウイルス性 単一=細菌性の可能性が高い」と考えればよいといわれているようですが、例えばマイコプラズマのように特殊な細菌が引き起こす上気道炎ではどのように鑑別すればよいのでしょうか? ご教示よろしくお願いいたします。
2 つの回答
風邪症候群についてきちんと勉強する事は、外来診療を正しく行う基本だと思います。風邪症候群については何と言っても田坂佳千先生(故) の “かぜ”症候群の病型と鑑別疾患. 今月の治療. 2006; 13(12) : 1217-21 が有名かつ基本だと思います。田坂先生は「かぜ症候群」を以下の病型に分けて考える事を提唱されました。 ① 非特異性上気道炎型 ② 鼻炎型 ③ 咽頭炎型 ④ 気管支炎型 それ以外として ④ 高熱のみ型 ⑥ 微熱・倦怠感型 ⑦ 特徴的所見のある型 医師が風邪症候群、すなわちウイルス性上気道炎として自信を持って診断出来るのはこのうちの① 非特異性上気道炎型のみ、です。 ① 非特異性上気道炎型 : 急性に、鼻炎症状、咽頭炎症状、下気道症状の3症状が同時に同程度存在する病態であり、3領域にわたる多様性はウイルス感染を示唆し、発熱の有無にかかわらず抗菌薬不要の病態と自信をもって診断できる。 つまり、ご質問にあった“ウイルス性を示唆する症状が多様”とは、かぜ症候群について言えば、もっとこだわって、上記の3症状をきちんと確認するべきだ、ということです。 では、マイコプラズマ肺炎との鑑別点はどうかといえば、マイコプラズマ肺炎の患者さんはこの3症状が“同時に、同程度”存在することは稀ではないでしょうか? 鼻炎症状(くしゃみ、鼻汁、鼻詰まり)や咽頭炎症状はあまり目立たず、一方、下気道炎症状である咳(特に乾咳) が目立つように思います。(すなわち ④気管支炎型 と分類出来ます。) 田坂先生が仰っていた様に、我々医師が風邪症候群を診断するというのは“何となく風邪”ではなく、ウイルス性上気道炎の“非特異性上気道炎型”の3症状にこだわり、他の病型としっかり区別し、“他の診断を鑑別・除外すること” です。 是非この機会に他の病型についても勉強し、自信を持って風邪症状で来院される患者さんをきちんと診断出来る様、準備をして下さい。 田坂先生の考え方を分かりやすく解説してくれている本として、山本舜悟先生の“かぜ診療マニュアル 日本医事新報社” または 岸田直樹先生の“誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 医学書院” を推薦します。 信州大学総合診療科 タムラ
|
大変詳しい回答をありがとうございました。推薦していただいた本を読んで、精進していきたいと思います。「かぜをきちんと診られるようになることが基本」肝に命じていきます。
|