医良人コラム
18/1/18

第12回 長野県の健康普及活動の課題について考えてみました 地域編

 

今回は健康七箇条の記事を書きながら、長野県の健康普及に関する現状と問題点について考えていることをまとめてみました。

一般のみなさまにも、医療関係者のみなさまにも健康について考えていただくヒントになることが少しでもあるかもしれませんので、ご一読をいただければ大変うれしく思います。


私たち信州メディビトネットは、長野県の医療者が長野県の方々に健康の基礎的な知識を広めたいと活動をしています。

医療、健康情報は世の中にすでにあふれているのに、なぜいまさら新しく長野県の健康情報を発信するホームページが必要なのでしょうか?

数えてみますと、理由は五項目ありました。

ひとつ目の理由①

一般の方々とお話をしていて、圧倒的に健康の基礎知識が少ないと感じます。

 

医療者:『腎臓の数値が悪いので気を付けましょう』
患者さん:『腎臓って何をするところですか?』

医療者:『体重オーバーのため、生活習慣病の要素が増えています。カロリーを控えましょう』
患者さん:『運動不足のせいですね!』

二つ目の問いの答えは間違いではないのでしょうが、ただしい考え方は 健康七箇条…の前の確認作業 後編 の『己を知る ⑥目的』をご覧ください。

 

『そうか、そこから説明をしないと伝わらないのか~』と感じる場面がしばしばあります。

当然と言えば、当然で、私がこの記事を書いているパソコンの仕組みや私たちのホームページの仕組みについては、私たちはまったくの素人ですので、トラブル発生時などに専門家の方にご相談をさせていただきます。

そうすると、基本的な単語が理解できずにそこから説明をしてもらわなくてはなりません。
一度聞いても理解できなかったり、すぐに忘れてしまうこともよくあって、何度も質問をしてしまって困らせてしまいます。

 

同じように、どうしても専門職種の多い医療者の情報発信は、一般の方には分かりづらい点があると思います。

ですので、私たちは集まった長野県の医療者が専門性の高い医療情報を、できるだけ分かりやすい健康情報として、長野県のみなさまに伝えていく必要があると考えました。

いかにわかりやすく、伝わりやすくして、健康の基礎知識を持っていただき、やがてはセルフケアや、セルフメディケーションに取り組んでいただいて、ご自身や、ご家族、ご友人など周りの人々の健康度向上にお役立ていただけることを期待しています。

 

ふたつ目の理由②

健康情報が溢れすぎている

今や、情報はだれでも発信できるために、とてつもない量の情報があふれています。

みなさまが、いざ健康や病気のことでお困りになられて、インターネットで調べようとしたらどのようになされるでしょうか?

いきなり、厚生労働省や学会のホームページに調べに行くでしょうか?

きっとそんなことはなく、グーグル検索で気になるキーワード検索をされることでしょう。
すると、上位にヒットするのは、おそらく健康食品関連などの商業的なWebサイトが並びます。

どのホームページを見てよいのか、信頼してよいのか、基礎知識のない一般の方々は、迷える子羊のような状態です。

私たち信州メディビトネットのホームページに公開しています『みんなの健康百科』や、この『医療人コラム』参考リンクを見てみてください。

厚生労働省や医師会、学会、行政機関などのWebサイトがリンクされていることが多いことがお分かりいただけると思います。

私たち医療者が見ましても、信頼性も高く、データもきちんとしていてしっかりしていると感じます。

大手製薬メーカーなどの都合に合わせたデータだとか、海外のデータも入っていてあてにならないなど、いろいろと異論もある方もいらっしゃるでしょうが、よくわからない健康食品や、健康関連産業の体験談を集めたような情報よりはよっぽど信頼性が高いでしょう。

そうです。
正しい情報は『すでに答えは出て』いて、『発信されて』いるのです。

しかし、一般の人がそれらを見ることは少なく、また内容が適正かどうかを判断することは難しいでしょう。

逆に、そういった機関はきちんとした情報を発信はしてくれているのですが、必要な人に届くように工夫をしようという視点はすこし足りないような気がします。

けっきょく、あふれる情報の中に埋もれてしまって、せっかくの効果が発揮できずにいます。
ですので、私たちのホームページは専門機関と一般の方を『つなぐ』ための役割を果たしたいと考えています。

私たちのホームページで基本的な知識を仕入れていただいて、さらにもっと詳しい情報が欲しい方は参考リンクをご利用していただけると、情報の海で迷う危険性が少ないようにという構成にしています。

水先案内、道先案内のような役割ができればいいなと考えています。

 

3つめの理由③

私たち医療者が診察室で患者さん教育を熱心に行っても、テレビや雑誌、お友達情報にかなわないことが良くあります。

たとえば高血圧の方に、減塩や体重を減らしましょうと熱心にご説明をしてみても、『お友達にすすめられて玉ねぎの皮の健康食品を飲みだしたので大丈夫』だとか、『トクホのお茶を飲みだしたのでもう少し様子を見てみたい』などなどよく診察室で聞かれる会話です。

他人の話だと笑い話のようにも聞こえるかもしれませんが、おそらく多少はどなたにでもあることでしょう。

お薬が増えることには抵抗感はあるようですが、冷静に考えていただくと、健康食品などは高価なものも多くお薬代以上に金額もかかることがよくありますし、効果や副作用もはっきりとわかりません。

もしかしたら、100人のうち1人の効果だったり、それも血圧が1㎜Hg下がることも効果ありとしているかもしれません。

医療者側もそんな状況をどうすることもできずに仕方がないとあきらめている節があります。

その点、テレビ、新聞、雑誌の影響力はすごいなと感じます。

私たちが一生懸命診察室で説明をしてもなかなか聞き入れてくれないものですが、テレビで言っていた、お友達が雑誌に書いていた、などど世論の雰囲気が変わると、今まで聞き入れてくれなかった方があっという間に変化をして素直に聞き入れてくれることがあります。

それであれば、『医療者自身がもっと強い情報の発信源になってみよう』と考えて、健康講座やホームページ運営をはじめました

長野県の医療者が運営しているホームページです。
とくに『病気の基礎知識』の内容は信州大学の各教室にもご監修をいただいていますので、信頼をしてご利用をいただくことができると思います。

また、そのような大学の専門性の高い医療職種の方々が、一般の方々に知っておいてほしいと思うことを、私たちのホームページを通して、伝える役割もはたしていきたいと考えています。

 

4つめの理由④

会えない方たちにも情報を届けたい

もちろん私たちは、診察室では一対一で一生懸命お伝えをしてはいますが、一人の医療者が出会える方の人数は限らていれます

また、困っている人が受診してくれないかぎり、たとえ病院や診療所のお隣に住んでいる人にですら、私たちの知識や情報をお伝えをすることができません。

私たち医療者はまじめな人間が多いので、新しい知識や、自分の技術を高めようと日々研修会や勉強会に出て、自己研鑽をしている方々がとても多い職種です。

私たち信州メディビトネットのメンバーは、せっかく高めたその専門家の知識を患者さんとして診察室だけで出会える方にお伝えするだけではもったいないと考えています。みなさまもそうお思いになりませんでしょうか?

当たり前のことですが、私たち医療者の本来の役割として、患者さんや地域住民にその知識を活用してこそ意味を持ちます

せっかく磨いた専門家の知識を少しでも多くの人に届けることができれば、目の前の人ばかりでなくて、出会ったこともないもないけれど、長野県の地域の方々の健康を少しでも支えることができるかもしれません。

二つ目の理由②でふれました専門機関とみなさまをつなぐ役割と同じように、専門家と一般の方を『つなぐ』役割も果たすことができればと考えています。

 


専門家の信頼できる情報を多くの方々に届けたい。
上手く届くとどのような良いことが起きると思いますか?


ほとんどの人は病気が出来上がってしまって、それから病院に受診をしますよね。
少し考えてみると、それでは遅くはないだろうか?と気づきませんでしょうか?

脳梗塞になったから救急車で受診をした。
進行癌が分かったので病院を紹介されて受診をした。

その方のこれからのリハビリや手術、抗がん剤などの身体的負担、命や生活に対する精神的不安、支えるご家族の負担、お仕事を続けられるか将来の不安、社会的医療経済的負担などなど、ひとたび病気が見つかれば、人生や生活にものすごく大きな変化が生じるのです。

私たち医療者は、日々患者さん方をそばで見させていただいていて、その大変さを痛感しています。


しかし、一般の方々は、健康は失うまで大切さには気づきづらいものです。

私たちの役割として、少しでも正しい情報、必要な情報を知ってもらって、どこかのどなたかが、一人でも、このホームページを見ていただいたことで、健康の基本的な考え方に気づいていただき、病気を予防できたり、早期発見で、大病を防ぐことができる人たちを増やすことができれば、医療者として喜ばしい限りですし、医療者の役割りをすこしでも果たすことができるのではないかと考えます。

5つめの理由⑤

情報をまとめたい

テレビや雑誌など、健康情報があふれていると先ほどお話をしました。

ある面では、それは良い面もあると思っています。

その理由は、『啓発』をしてくれることです。
私たち臨床現場の医療者の情報発信力だけでは、届かない方たちにも情報を届けてくれるからです。

たとえば、6月の梅雨明けが近い時期になると『熱中症』の記事やニュースが取り上げれます。
一般の方々も対策を気をつけようと考えてくれて、そのおかげで相当数の方が熱中症を予防できて、病院に受診することを防いでくれていると思います。

『啓発』することはとても大切なことだと言えます。

しかし、その一方で情報は『啓発』だけでは、足りない面があると考えています。

それは、情報を『蓄積』するということも同じように大切だからです。

 

たとえば、夏になり30度を超えて暑くなり、いざ本当に具合が悪いぞ、これは軽い『熱中症』ではないだろうか?と考えた際にあなたはどうするでしょうか?

すぐに病院を受診することもよいでしょうが、本当に熱中症の症状にあうかをご自分で調べる方もいらっしゃることでしょう。

しかし、わざわざ『熱中症』のニュースを録画しているわけでもありませんし、おそらく新聞記事を切り取っていることもありませんでしょう。

さて、困ったとインターネットでしらべると、理由②のところでお伝えをしたように、情報があふれていて、どの情報を信じればよいのか迷われることでしょう。

私たちも情報を発信する『啓発』はとうぜん大切なのですが、情報を『使い捨て』のようにしていては勿体なく、その情報を『蓄積』して、いざ困ったときに参考にできる環境も大切と言えると思います。

病気の本質が変わることはないので、『熱中症』は一年たっても『熱中症』ですし、私たち医療者が管理をしているホームページですので、定義の改定や新しい薬剤など逐次改定をしていますので、ご自宅にある家庭の医学のご本よりは新しい情報を得られることができます。

私たちは情報発信のチャンネルは少しでも多い方がよいと考えて、健康講座とインターネット発信を車の両輪として『啓発』と『蓄積』の両方の活動を行っています。
健康講座と言えば、次のような考え方もあります。

私たちも年に10回程度の健康講座を開催しています。

しかし、講演を聞いた方たちは、じきに8割がたは忘れてしまうと言われています。

私たちの健康講座ではかならずお土産として『資料のまとめ』を持って帰っていただき、自宅でご家族とご一緒に実践、継続してもらえるようにしています。

しかししかし、健康講座に参加をして聞いていただける方の数は、一回に100人程度です。
松本市民25万人、長野県民200万人の中では効果は不十分であることは自明です。

もっといえば健康講座をやっているという自己満足で終わってしまう危険性があります。

そのためにも、インターネット上に資料を『蓄積』して、本当に病気になって情報が必要になり、困った際にいつでも参考にできるような環境にしたいと考えたことが、長野県民向けホームページの製作のきっかけのひとつです。

長野県のみなさまが、健康のことでさて困ったぞ!どうしよう?と考えた時に、まずはメディビトネットのホームページを見て見ようと思い出していただいて、私たちのホームページを入り口に調べ物をしていただき、適切な対処をとっていただくことができればとても嬉しい使われ方だと考えています。

とくに『病気の基礎知識』の中に『ホームドクターからのアドバイス』というコーナーをつくりました。

例えば、病院を受診した際に、『頭を打ったときの注意点』『インフルエンザにかかったときの注意点』『胃腸炎の時の食事の注意点』など、各医療機関で作った手作りの説明書などをもらうこともあるでしょう。

患者さんにせっかく説明をしても帰り着くころには忘れてしまっていることも多いことでしょう。そういったわかりやすいアドバイスのまとめを一箇所に集めて、情報をより広く利用をしてもらいやすい環境にしていきたいと考えています。

今後、そのような分かりやすい資料も私たちのホームページに掲載をして、いつでも閲覧、印刷、ご利用していただけるようにしていきたいと考えています。

 

以上、一般の方の健康をとりまく5つの問題点とその理由をご説明をさせていただきました。


このような地域の健康づくりの課題が少しずつでも改善をされて、長野県のみなさまの全体の健康知識が増え、実践につなげていただいて、長野県の健康長寿が少しでも延長することにつながれば、私たちにとって大変喜ばしいことです。


次回は、今回の理由を具体例とともに確認をしてみます。
またもう少し大きな課題もご紹介させていただいて、長野県の健康度がすこしでも向上するためのご提案をさせていただきたいと思います。

 

今回のまとめ

① ご自身のために長野県の医療者と一緒に健康の基礎知識を増やしましょう。
② 健康情報が溢れすぎているので信頼できる情報源を作りましょう。
③ テレビや雑誌、お友達情報ばかりではなく、医療者の情報に目を向けてみましょう。
④ 病気になる前から健康に気をつけましょう。
⑤ いざという時には信州メディビトネットが運営する当ホームページ『信州健康の森 まんまる◎広場』をご参照してみてください。
  ご家族お友達にも教えてあげましょう。

 

 

健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 

健康七箇条…の前の確認作業 前編

健康七箇条…の前の確認作業 中編

健康七箇条…の前の確認作業 後編

健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条①

健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条②

健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条③

長野県の健康普及活動の課題について考えてみました 地域編 (今回)

長野県の健康普及活動の課題について考えてみました 医療者編